『同一労働同一賃金』で求められる運送会社の対応④
前回に引き続き、同一労働同一賃金で運送会社の対応について解説します。
今回も正社員と正社員以外に待遇差があることを前提に、
その待遇差が不合理(法律違反)と判断されないための対応について解説します。
まずは昇給、賞与、退職金です。
【昇給・賞与の基本的な考え方】
①昇給
正社員と同様に、勤続により能力が向上した正社員以外には、勤続による能力の向上に応じた部分につき
正社員と同一の昇給を行わなければならない。
一定の相違がある場合においては、その相違に応じた昇給を行わなければならない。
②賞与
会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給するものについては、
正社員と同一の貢献である正社員以外には、貢献に応じた部分につき、正社員と同一の賞与を支給しなければならない。
一定の相違がある場合においては、その相違に応じた昇給を行わなければならない。
退職金についてはガイドラインで考え方は示されていません。
賞与については大阪医科大学に関する最高裁判決(令和2年10月13日)、
退職金についてはメトロコマースに関する最高裁判決(令和2年10月13日)において、
同一労働でなければ、正社員以外の賞与及び退職金は不支給でも不合理(法律違反)ではないという判断が下されました。
ただし、この判決はあくまでもこの事案に対する判断で、
これをもって、賞与及び退職金不支給がすべて正当化されたわけではありませんので注意が必要です。
賞与及び退職金の支給範囲や目的、金額の判断要素等について、就業規則に明記しておくことが重要になります。
【福利厚生等の基本的な考え方】
①病気休職
正社員以外にも、正社員と同一の病気休職の取得を認めなければならない
②慶弔休暇
正社員以外にも、正社員と同一の慶弔休暇の取得を認めなければならない
③福利厚生施設(給食施設、休憩室および更衣室)
正社員と同一の事業所で働く正社員以外にも、正社員と同一の福利厚生施設の利用を認めなければならない
④転勤者用社宅
正社員と同一の支給要件を満たす正社員以外には、正社員と同一の転勤者用社宅の利用を認めなければならない
福利厚生等について、上記の4点はガイドラインで正社員以外にも同一の取得や利用を明記しています。
その他の点については、正社員と正社員以外とに差異があっても、認められる可能性はあることになります。
今回で運送会社の同一労働同一賃金への対応の解説は終了します。
運送会社では、そもそも有期雇用契約やパートのドライバーは少ないかもしれません。
しかし、日給のドライバーや時給の作業職、事務職がいる運送会社は多いでしょう。
当然その従業員への対策も必要ですが、これを機に、
社員の定義や基本給、昇給や手当等の給与体系全体を見直してみてはどうでしょうか。
トラック運送業特化社労士 名古屋 清隆[北海道(札幌市)を中心に活動]