コラム

定年後再雇用の待遇格差自体は不合理ではない 最高裁が初判断(長澤運輸訴訟)

長澤運輸訴訟は
定年後に嘱託職員として再雇用されたトラック運転手が
正社員のときと同じ仕事内容にもかかわらず
賃金を3割近く引き下げられるのは違法だとして
これまでと同じ賃金の支払いを求めている訴訟です。

最高裁は6月1日、
 定年退職後の再雇用などで待遇に差が出ること自体は
不合理ではないと判断しました。
その上で、正社員と嘱託社員の賃金格差が不合理かどうかは
「各賃金項目の趣旨を個別に考慮すべき」とする初判断を示しています。
つまり各賃金や手当それぞれについて
正社員と嘱託社員での支給の有無、内容の違いについて
説明がつかなけれならないということになります。
しかし、賞与の不支給などについては
職務内容や配置の変更にだけで決まるものではなく
会社の経営判断や定年後の再雇用等の様々な事情を考慮し決まる
という会社の実態を認めています。

①能率給及び職務給が支給されない → 不合理ではない
基本賃金を増額,歩合給に係る係数の一部を有利にする
老齢厚生年金の支給開始まで2万円の調整給を支給するなど等
の代替措置をしているため

②精勤手当が支給されないこと → 不合理
精勤手当は,1日も欠かさずに出勤することを奨励する
趣旨で支給されるものであるので
正社員と嘱託社員の職務の内容が同一である以上両者の間で,
の皆勤を奨励する必要性に相違はないため

③住宅手当及び家族手当が支給されない  → 不合理ではない
従業員に対する福利厚生及び生活保障の趣旨で支給されるものである。
老齢厚生年金の受給と調整給の支給があるため

④役付手当が支給されないこと → 不合理ではない
正社員の中から指定された役付者であることに対して
支給されるものであるため

⑤嘱託乗務員に対して賞与が支給されないこと → 不合理ではない
賞与は,月例賃金とは別に支給される一時金であり
労務の対価の後払い、功労報償、生活費の補助、労働者の意欲向上等
といった多様な趣旨を含んでいる。
年収額は定年退職前の3割減程度であり
嘱託乗務員の収入の安定に配慮しながら
労務の成果が賃金に反映されやすくなるよう
に工夫した内容になっているなどを総合配慮できるため

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